限られた時間を記録する、学生スポーツ
- Giro

- 12 分前
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フリーのカメラマンは、言ってみれば何でも屋。
家族写真やお子さんのなにかの記念、コスプレイヤーさんの写真集作り
アーティストさんの作品撮り、お店の紹介
あまりに多岐にわたるのと、あくまで裏方なこともあって
表に名前が出ない、出せないことも多い。
実際、私は仕事では名前を使い分けることがある。
例えば、コスプレイヤーさんのちょっと露出の多い衣装での撮影をしている
ということ自体にはなんら問題はないとは思っているが
そういう撮影のカメラマンだ、というイメージを持たれると
お子さんの七五三の撮影は依頼しづらいのではなかろうか。
優しい雰囲気のアート作品を作られるアーティストさんの写真を担当して
かたや暗くていわゆるグロさも感じるような作品を撮っていては
何も知らないファンの人を驚かせてしまうかもしれない。
そんなわけで名前が出なかったり出せなかったり
変えたりしながら、日々あれこれと色々な撮影を行っている。
そんな私が先日、ある大学の運動部の撮影をすることになった。

実のところ、こちらの部は自分がプロとして独立する前から撮影していて
ただの観客が応援しながら写真も撮らせてもらっている、という立場だった。
それが今年の春ごろから、監督やチームからありがたいことに色々とよくしていただき
そして今回は正式にオフィシャルとして撮影をすることになった。
機材紹介でも何度も触れたが、スポーツの写真はけっこう撮ることがあり
基本がZ9の2台体制(+aでサブを持っていくこともないわけではないが)になってからは
1つはZ 70-200mm f/2.8 VR Sを基本に、最近は
AF-S 120-300mm f/2.8E FL ED SR VR
Z 400mm f/2.8 TC VR S
あたりを使って撮ることが多い。
ただ今回はかなり選手と近い位置から撮る形になったため
先日出たばかりのZ 24-70mm f/2.8 S IIを使うことにした。
スポーツの現場では、競技にもよるが
カメラマンゾーンやエリアが設けられていることが多い。
例えば野球の場合は何か所かエリアがあって、ピッチャーを撮るならこの位置
みたいな感じで役割分担がしやすく、位置に併せて機材を選ぶのが基本だ。
間違ってもシャッターチャンスだからと、いきなりマウンドにカメラマンが
入ることはあり得ないのは誰でもわかる。
サッカーでもピッチ内にカメラマンが入ることはなく、グラウンドの端々や
会場によってはキャットウォークにも待機してチームで撮る。
今回の競技も普通なら、選手たちがプレーしているエリアと
いわゆる観客席の間に、カメラマンエリア、プレスゾーンというのがあって
その中を適時移動しながら撮ることになる。
ある程度エリアが仕切って設けられていると
色々と自由にできることも増える。
例えば予備機材をそこに置いておいてもいいし
飲み物や場合によっては折り畳み式の小さな椅子などを使う人もいる。
しかし今回の私の場合は、学生スポーツということで
そういうエリアもなく、プレーしている選手たちと何の隔たりもなく
ただただ数mの距離で撮るという形だった。
つまり、一番困るのは、機材が置けない、ということだ。
もし使っていない機材をとりあえずその場に置いて撮影していて
そこに選手が突っ込んできたら、怪我の原因になりかねない。
だから自分に常に身に着けられる範囲の機材にするしかなかった。
よくある、念のためカメラには付けていないが、超望遠の単焦点だけ
一脚に着けて持ち運んでおく、みたいなことができないのだ。
当初はストラップなどを多用してレンズ三本編成で、というのを考えていたのだが
これが結構リスキーだった。
床におけるタイミングがないということは常時、体に吊り下げねばならず
前述のようにちょっとしたタイミングで床に置くこともそうはできない。
となるとカメラ2台、レンズ2本が関の山か。
もう1本常に吊り下げておくとしても邪魔にならないサイズのレンズといったところか。
以前に紹介したかどうか定かではないが
私はこういう時はブラックラピッドのハイブリッドブリーズを使うことが多い。

ワンショルダー型でいわゆるショルダーバックのように斜め掛けにするのだが
さらに反対側にも吊るすことができる。
1台はZ9に70-200、もう1つはZ9に24-70のⅡ
吊り下げてみると非常にしっくりくる。
バランスもいいし、さっと構えてすぐ持ち変えることもできるし扱いやすい。
こういう吊り下げタイプは速写性、そして持ち変えやすさがカギで
いくら重い機材が持ち運べる、というのが売りでも
いざという場面でもたつくようでは話にならない。
幸い今回は軽めの機材編成だったこともあり、非常に快適に使い分けできた。
そんなわけで、その場その瞬間にしかないスポーツ撮影。
1プレーも逃さじと集中したら、2時間程度の試合で撮影枚数は9,000枚ほどだった。
多いと言えば多いが、そんなものといえばそんなものだ。
不必要な場面での連写は控えたのがよかったのかもしれない。
結果的に私自身も、また部の方からも好評、ご満足いただけたようで
また次回もできればいいですね、という話にはなっている。
写真というものとの向き合い方は色々で
95%だめでも、最高の1枚が撮れればいい、という考えもあるだろう。
コンテストに出すためとか、自分の作品作りとして写真家さんがこだわれば
そういう方向性になっていっても不思議はない。
ただ、今回のようなスポーツ撮影で、特に趣味や自己満足とは違って
依頼を受けて、という場合には、全部の場面をしっかり撮る、という意識がいる。
いつ最高のシーンが来るかなんて選手含めて誰にもわからないんだから
全部の場面を押さえておかなければならないからだ。
そんなわけで今回は機材選定も含めてばっちりいい感じで
やっぱりスポーツ撮影のやり直しのきかないシビアさこそ
プロとしての姿勢が問われるな、と改めて感じたのだった。



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