ニコンから待ち望んでいたレンズが出た。
Z 50mm f/1.2S である。

レンズフードにこういうフィルムが付いているのは初めて。
運送時の傷や汚れ防止だろうか、もちろんすぐ剥がすが、ちょっと驚いた。
Zマウントでニコンは長年のFマウントから大きく変わり
レンズ設計の自由度が増したということで、意欲的なレンズが出ることは純粋に嬉しい。
Zには58mm f/0.95 noctという化け物がいるが
こちらはさすがに重すぎることもありMFレンズであるが 今回のZ 50mm f/1.2は一応常識的なサイズ・重量でありAFレンズである。
私の場合はこのレンズが出るというのを知っていたからnoctを買わなかったと言える。
ちなみにこのレンズの開発エピソードについては こちらの記事が非常に面白く読みごたえがあったので紹介させていただく。
さて、そんなわけで予約購入した当レンズ f1.4までと比べて未知の世界をnoctよりも手軽に楽しめるとウキウキ。
とはいえさすがに50mmの単焦点としては大きくて重い。
テストで付けてみた時はともかく、先日実際に撮影で使ってみると 重さを感じる瞬間もあり、その辺り含めてレビューしていきたい。

撮影ではこういうスタイルでの使用もあった。
Z6Ⅱに縦グリップを付け、Z 50mm f/1.2Sを装着、さらにprofoto A1Xを載せた。
こうなると重量は概算で2.5kg程度? さすがに片手で変なアングルでホールドすると手首にずしっと来る。
が、カメラとレンズだけなら2kgもないのでそれほど重くは感じない。
(そもそもライトをオンカメラにすると重心が悪くなるので負担は大きい)
50mmというのは非常によくある画角で使い勝手が良い。
当然このレンズもそうだ。
広角のようにパースを効かせたり、超望遠のように あるいはマクロレンズのように肉眼では見えない景色を見るわけではない。
あるものをあるがままに写す画角だと思う。
ただしf/1.2は少し世界が違って見える。

なんてことはない群生した草花でもどこを見ているか、視点が強調されやすい。
実はこちらはf1.8まで絞っているのだが、それでも十分なボケである。
何よりボケが美しい。
ちなみにこのレンズ最短撮影距離が撮像面から45cm 最大撮影倍率は0.15倍となかなかのものだ。
私のお気に入りFマウントの105mm f1.4は最大撮影倍率1.3倍で もう少し寄れれば、と感じることも何度もあった。
もちろん105mmをそんな近くで使いたいかと言われればそれまでだが せっかくの大口径レンズ、寄って使いたい場面で使えない、というストレスは 少ないに越したことはない、50mm f1.2はその点も非常に優秀である。

こちらは1/3段絞ってf1.3。 当たり前なのだが、f1.2から1/3段絞ってもf1.3にしかならないのは 最初思わず笑ってしまった。
f2.8なら1/3段絞ればf3.2なので f1.2→1.3ってこれ変化ある?と思わず思ってしまったが 当然元の数が小さければ掛け算しても小さいわけだ。どうでもいい話。
ニッコールレンズはもともと逆光だったり斜めから入る光に強いイメージだが ナノクリスタルコート、そしてアルネオコートと、コーティングも進化して
もはや光とお友だちなくらいの自信を感じる。

こちらは開放f1.2。ボケは綺麗だし端でも解像力高い。
さて解放からボケが綺麗で端まで解像力が高い、ということは
構図も自由度が高く、好きなように撮れる、と言って差し障りない。
また大口径レンズは開放が使いたくなりがちだが、もちろん絞っていくと 画、描写が変わるのも味わえるので、その辺りも色々といじる楽しさがある。

こちらはf2.8まで絞ってみた。
立ち枯れの紫陽花の残酷なような質感が良く出ている。
しかし後ろの葉や茎は程よくボケており、ある程度寄れる強みが出た。
あと一歩寄れないレンズもある中で、これは大きなアドバンテージだ。

こちらはf1.6、立体的なものの作りのバランスや脆さ、儚さが感じられる。 こういうものは単にボケればいいわけではないので、芯が来ている部分を拡大してみた。

最近のレンズはどこも優秀なのだが、当然こちらも素晴らしい解像力で 恐ろしいほどの質感描写となっている。
さて、f1.2レンズという事で
開放でのボケを大きく活かした画を使うことも多いだろうが 個人的には絞った時でもボケのなめらかな様子に感心した。
臨機応変に色々といじりながら使っていくのが楽しいレンズだろう。
そして何より特筆すべき点は、このレンズの価格である。
何と実売25万円。
ちょっと別格とはいえ、noctが100万円オーバーなのを考えれば 超バーゲンプライスではないだろうか。
実のところ私は、このレンズ35~40万円くらいで出るのでは、と予想していたので 驚いてしまったし、ニコン大丈夫?と心配にすらなった。
だが私は確信している。
これはニッコールの誇りにできる超力作レンズであるが 決してnoctのように受注生産の特別品ではなく、カメラ・写真にハマった人すべてが 大三元レンズと同じくらいの感覚で手を伸ばせる普及レンズなのだ。
そして多くのZユーザーがこのレンズを手にする事でその魅力が世界に喧伝されるだろう。
いわばZマウントの広告塔であり、Zユーザー必携の神レンズであり 先に紹介したインタビュー記事のように ニコンが妥協無く作ったこのレンズは、薄利多売というか利益度外視なのだろう。
もしこの記事を読んだZユーザーがいれば、ぜひこのレンズを買って欲しい。
値段以上の価値を確実に感じられるレンズである。
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