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Primoplanと共に

Meyer Optik Goerlitz社のレンズが現代に復刻する


というニュースを聞いた瞬間から、なんだか心惹かれた。


その日から私の頭の中には、メイヤーのレンズがひっそりと


しかし確実に、潜み始めるようになったのだ。



興味のない人のためにざっくりと言ってしまえば


100年前にドイツで生まれたレンズメーカーの、代表的な幾つかのレンズを


社の100周年記念で復刻させ、現代のデジタルカメラで使えるようにしようというもの。



そして、その企画の目玉はMeyer社を代表する Trioplan 100mm F2.8だった。


このTrioplanの特徴は、最近のレンズでは考えられない15枚の絞り羽根と


3群3枚の独特なレンズ構成によって生み出されるシャボン玉ボケ。


細かい話は割愛するが、非常にボケが特徴的


ある意味では「ボケの主張」の激しいレンズである。




が、私の頭に巣食って止まなかったのはこのレンズではなく


4群5枚のレンズ構成である Primoplan 75mm F1.9の方だった。


Trioplanのようなシャボン玉ボケが出るわけではないが


こちらも14枚もの絞り羽根があり、現代のレンズとは全く設計思想が異なる。


解像力がバリバリだとか、収差がどうだとか、スペック評価をするレンズではない。


所有し、使うことが楽しい、そういったレンズだと思う。(性能が低いというわけではない)




普段スポーツ写真で、70-200mm f2.8E FLや300mm f2,8みたいな


スペックごりごりの、とにかく厳しい条件での性能ありきで使っているような人間が


なぜこのレンズに惹かれたのか、というのは自分でも不思議な部分もある。



なお、ポートレートなどで愛用しているのは、現代ニッコールの究極形のような


最新の105mm f1.4だったりもするので、スポーツ以外では…という言い訳もできない。




実のところ、私のカメラ趣味のスタートは


父がその昔やっとの思いで手に入れたというCanonのAE-1というフィルム一眼である。


このカメラ、AEではあるがAFではない。つまり完全マニュアルフォーカスカメラなのだ。



これをバリバリ使っていた、というわけではないが


このMFカメラを、自分の原点というか源流のように感じている私にとって


MFレンズというのは、例えていえば田舎の祖父母に逢いに行くような


決して、長い時間を共に過ごし慣れ親しんだわけでもないのに、なぜか懐かしく感じる


あの不思議な感覚に近いものがあるのかもしれない。




D850 + Primoplan 75mm F1.9


なお、このレンズの絞り環にはクリック感がなく、ヌルヌル動くので

f2.0だとかf2.8だとか正確な数値は分からない。上の写真はf2.8付近だと思う。


多数のレンズで補正されているわけではないので収差も出やすく、ボケもうるさくなりがち


周辺解像も弱いが、なんだか優しさと懐かしさを感じる描写にほれ込んでしまった。



D850 + Primoplan 75mm F1.9



もっと解像力が弱く、D850のような高画素機で使用すると


拡大してチェックしたら、かなり厳しいのではないか、と思っていたが


ピント面に関しては、なかなかどうしてしっかり解像してくれている。


慎重にデジタル撮影の要求に適応させました、と販元が書いているのも納得だ。




なお、このPrimoplanという名前


ラテン語の「最初の」を意味するPrimoとドイツ語の「平坦な」を意味する


Planを組み合わせたのが由来と言われているがどうなんだろう。


ただ、私にとってこの「古い設計の新しいレンズ」こそが


なんだか『新たなスタート』を予感させていることは間違いない。

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