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  • 執筆者の写真Giro

愛とは

4/8、DCDZ展示会に行ってきた。


ネットで見たDollChateau Christinaの公式写真に

心を撃ち抜かれてから、悩みに悩んで

ドール者の先輩でありひょんなことからtwitterで繋がっていた御方に相談し

海外ドールのお迎えをお助けして下さる代理店さんに依頼し

意を決して手続きを済ませ、ようやくお迎えできたのが2013年のことだった。


少し前にtwitterにも書いたが

それはちょうど2度目の手術が決まった頃でもあった。


いや、むしろ2度目の手術が決まり

担当医から、危険性の説明を受け

「最悪の場合はこれだけの確率で死に至ります」と言われたからこそ

好きだけど、自分自身がドールと暮らすということを

どこか別世界の話のように感じていた私が、お迎えを決断できたのだろう。


手術前にお迎えして、悔いなく手術を迎えるつもりが

結果的には到着予定が遅れ、手術後のお迎えとなったのだけれど。


そのおかげで手術の時に「一目も見ずに死ねるか…!」と思えたともいう。




あれから丸5年。

私はDollChateauのドールさんたちと暮らしている。


Christinaは

ボルヘスの短編とリャマサーレスの「黄色い雨」の登場人物から

ウルリケ・サビーナと名付けた。


Austinは、A・クリストフの「ふたりの証拠」から、マティアス。


Larryは サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の

主人公ホールデン・コールフィールドの妹からフィービー。


全て、強い意味を込めて名付けさせてもらい

日々、みんなと過ごしている。




DCDZ展示会に行くには、勇気が要った。


折しも、限定ドールの買い占め・転売事件が起こった直後だったし

私のような人間がDollChateauの展示に行ったら世界観を壊してしまうんじゃないか。

他のお客さんの迷惑なんじゃないか、と。


しかし、自分の人生を支え続けてくれているドールたちの

いわばホームイベントでもある。

感謝の気持ちも込めて行かなければ、いや、行きたい、そう思った。



会場の中の様子を、私のつたない文で記すことに意味はない。


とにかく素敵な空間で、ドールたちの静かな息遣いに満ちていた。


そして、他のお客さんを見て、こんなにたくさんの方が

DC・DZを好きで、こうして集まったんだなーと思うとなんだかジーンとしてしまった。



そんな中で、ふと会場の奥で目に止まったのがElizabethだった。


新作として発表されたときから、気になって仕方なかったElizabeth

蜘蛛の身体に人の顔、いわゆる人外系なのだが

こんなにもかわいく、美しい、異形の生物がいるだろうか、と見とれてしまったのだった。


その子が、現実に目の前にいた。

いや、白いストレートの髪は、公式写真の子以上に、私の魂を掴んでしまったのだった。


お迎えしたい、と思うと同時に

それ以上に強く思ったのが

「私がお迎えしてはいけない」ということだった。



展示会の子である。

今日1日できっと多くの出会いがあり

私より、もっともっとふさわしい方にお迎えされるだろう。

私のようなものがお迎えして、そのチャンスを潰すような事はあってはならない。



会場をぐるりと回り、どの子も美しく、かわいらしく、愛おしかった。


あ、この子も以前から気になっていた子…と思う子もいた。

しかし、どうしてもElizabethのことが気になった。


迷惑にならないよう、ゆっくりと会場を2周3周と回った。



ふと気づくと、多くの子が既にお迎え済みになっていた。

(名札・値札の紙をレジに持っていくとお迎えとなるので

札の無い子は、既にどなたかがお迎えしているということになる)


あ、気になっていた子はまだ札がある、と思った時に

目の前で他のお客さんが、その子の札をすっと取り、レジに向かっていった。



なんだか胸がどきどきして、ひょっとしたらもうElizabethも…と思い

気が付くと自然に向かっていた。


まだあった、正直ほっとした。

でも自分がお迎えして良いのだろうか、という葛藤はまだあった。


そこで、少し時計を見てみた。

10分、今から10分待ってお迎えされなかったら、運命だと思って自分がお迎えしよう。

そう決意して少し離れた位置から見ていた。



気の遠くなるような時間が流れた。

Elizabethの前にひとが来るたびにドキドキして、

札に手を伸ばすのでは…と思うと泣きそうになった。


7分ほど経った頃だったと思う。

1人の女性が、熱心にElizabethを見ていた。

もう耐えられないと思った。

でも同時に、この方がお迎えされるなら、そういう運命だったと諦めよう、と思った。


次の瞬間、その女性がElizabethの前から立ち去った。

時間はまだ10分にはなっていなかったと思う。

だがもう無理だった。私は札を手に取っていた。



かくして私はElizabethをお迎えすることになった。


今でも、私がお迎えして良かったのだろうか、という思いはある。

でも、他のドールたち同様、人生をかけて大切にする、私にはそれしかできない。




郵送でのお迎えとなったので、今日無事到着となった。


ウィッグもまだ乱れていて申し訳ないけれど最初のショットである。

裸もなんなのでウルリケさんのシャツを。


名前は、サリンジャーの短編から「エズメ」と名付けた。

戦争で精神が傷ついた主人公の心を救う少女の名である。


ゲッベルスの本に ある 「人生は地獄なり」という文に

ドストエフスキーの

「地獄とは愛することのできない苦しみだと思う」 を書き足す「私」


地獄のような戦場で、ぼろぼろに傷ついた「私」を、エズメは救う。

飾り気のないエズメの手紙と壊れた時計が「私」を眠気に誘う。

眠りは癒しだ。地獄で、地獄を忘れ心から眠ることができるようになるのだ。


私はきっと、展示会で出会ったエズメに、心を癒されたのだ。

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