先月から今月(つまり2025年2月~3月)は、けっこうハードで 今日はあちらで撮影し、○○まで移動して宿泊し、翌日はそこで撮影してから さらに移動して宿泊、翌日も撮影…
みたいなことがあったり、毎週のようにあちこちに移動し 時には1日7時間以上も移動に費やしたり、という日々だった。
そういう状況が続くと、単純なミスが増えたり
集中力途切れてるな、と感じるタイミングもあり
そしてそういう時にこそ、起きて欲しくないことが起こるものである。
そう、前置きが長くなったが、今回は
撮影データ入りのカードがエラーを起こし、データ消失、復旧に当たった話だ。
その日、私は某所で撮影を行い、その翌日はもっと遠いところで撮影だったので
家に帰らずに宿泊場所まで新幹線で移動していた。
新幹線では電源が使える窓側の席を確保していたので
少しでも作業がスムーズに行くように、移動中に撮影データを カメラのカード→ノートPCに移行しようと思い立ち、転送作業を開始した。
今にして思えばだが、前述のようにこの時点でかなり疲労は積み重なっており
集中力がかなり細くなっていたのは間違いない。
新幹線車内で荷物を全て開くわけにもいかず
機材バッグからノートPCとカードリーダー、カメラ、そしてケーブル類を取り出して
作業を行おうとしたが、いつも使うカードリーダー用のケーブルではなく
他のケーブルが先に出てきたので、それで行おうとしたのが全ての間違いだったかもしれない。
・カードリーダーのエラー
カードリーダーを繋ぎ、そこにさっき撮ったばかりのデータの入ったカード(CFe type-B)を
挿入し、データをとりあえずバックアップとしてノートのCドライブに移す、という
よくある流れを行おうとした瞬間、急にカードリーダーへのアクセスランプが点滅し
接続が非常に不安定になったかと思うとそのまま切れてしまった。
しかたないので再度挿入し直して認識させようとしたところ、いきなりのエラー表示である。
あれ、と思ったがどうしようもない。PCではカードを全く認識しなくなってしまった。
仕方が無いのでリーダーから外し、カメラ側で見てみようとカードをカメラに移す。
すると電源を入れた瞬間に「フォーマットしてください」のエラーである。
あちゃーと思ったが、これもどうしようもない。
なお、長年デジタルのカメラを触っていると、こういう事はたまにある。
以前は撮影しだした途端にこのエラーが起きたので、その場でフォーマットをしたが
結局上手く認識できずにメーカーに連絡して新品交換となった。
ただ、今回は撮影後のカードで、今日撮った200GBくらいのデータが入っている。
ヘタにいじると復旧できなくなる恐れがあるので、とりあえずその場では復旧を諦め 他のカードの作業に移ることにした。
とはいえ、この調子で次々にカードがエラーを起こすと冷や汗ものなので ケーブルを念のためいつものに変えて作業することにした。
やるべき作業は山のようにあるのだから。

実はこの時は、まだまだかなり余裕を持っていた。
というのも今までカードエラーやSSDのエラーで、認識しなくなったものでも
データが消えているように見えてもデータ自体は残っていて、それをエクスプローラーで表示できなくなっているだけ、復旧ソフトを使えば全部吸い出せた、という経験が何度かあったからだ。
ただ数日家に帰れないので、復旧はその後になる、その間はこのカードは使えないな、と予備のカードを使うことにした。
ちなみに今回エラーを起こしたのはProGradeDigitalの1TBのもの。
(より詳しく書くとCFexpress 2.0 Type Bのもの)
幸い予備カードも幾つか持っていたので、その後2日間の撮影には支障はなく
無事に終えて帰宅し、以前使ったことのある復旧ソフトを使ってみた。
が、ここからが悪夢の始まりである。
・データ消失
まず、復旧ソフトを使ってみても、何のデータも見つからなかったのだ。
普通は名前とか形式とかが壊れていたり、場合によってはファイルの分割ができてなくて
変な切れ方をしたデータの塊だけがヒットしたりして、何らかの処置が必要なケースがある。
が、今回はそういうレベルではない。
全く何のファイルも、データの欠片すら見つからなかったのだ。
さすがにちょっと冷や汗をかいた。
私はZ9を2台運用してカードを4枚同時並行で使用している。
撮影の内容によっては1台当たり2枚のカードはバックアップモードで撮影し
1枚のカードがぶち壊れても、もう1枚にはしっかりデータが残るようにしているが
今回はちょっと違った運用だったので、メインスロットにこのデータ、2枚目にこのデータと分ける形式で撮影していた。
その結果、このカード以外にはそのデータは入っていない、という状況でエラーを起こし
そして復旧ソフトで何も見つからない、という絶望的な状況に陥ったのだ。
実はソフトを使うに当たり、まずPCにカードを認識させるために、いったんクイックフォーマットをしていた。
フォーマットしたらカードの中身は全部消えて当然、と思われるかもしれないが
これはあくまで「書き込めるようにする」作業であり
カードの中身のデータをきれいさっぱり消失させているわけではない。
(※ やり方によるので試す際は自己責任で)
試しに、他のカードで適当に数枚写真を撮り、PCでフォーマットしてから復旧ソフトにかけると、今消したばかりのデータが普通にヒットし、直ぐに復旧できた。
何度かやったことのある作業なので、そうだよな、と確認してみただけのこと。
しかし問題のカードは何のデータも見つからないのだ。
慌てふためいたが、前述のように、この時期とにかく忙しく、また数日後には違う場所に遠征して撮影せねばならず、1TBのカードをいつまでも保留しておくのも困るし、なにより撮影データを早めにチェックして、内容によっては迅速に納入せねばならない。
幸いほかのカードに記録されていた分が撮れ高もよく、どうにかなったが
それでもこのカードを復旧することもかなり重要だ。
・本格的な焦り、公式ソフト購入
そこで迷ったがProGradeDigitalの公式復旧ソフト「Recovery Pro」を購入することにした。
正直復旧ソフトはフリーのもので十分使えることは分かっているので
バカバカしい気もしたが、なにせ肉体的にも脳内処理的にもクタクタで疲労困憊
さっさと終わらせたかった。
$54.99にて購入(換算はなんと¥ 8,425、円安が憎い)
早速使ってみるが、フリーソフトと同じ結果に終わる。
ここにきてようやく本格的に焦り始める。
次の撮影も迫っているので、とにかく公式メーカーに連絡を入れる。
公式復旧ソフトを買ったのに、エラーが出たカードからデータの欠片すら見つけられないんだけどどうしたらいい?と(英語で大まかにこんなニュアンス)
ここからProGradeDigital社サポートとの2週間以上に及ぶ長いやり取りが始まる。
なおその間、私は各地で撮影があり、ずっと復旧ばかりやっていたわけではないことは付記しておくが、話が前後してしまうので、ここでは主に復旧の件にスポットを当てる。
メーカーからは、まずソフトの使い方についての確認、レクチャーのようなメールを頂く。
カードのシリアルNo.やどういう風にソフトを使っているかのスクショを送り
相手からは次はこうしてくれ、ここにチェックが入っているか確認してくれ、など。
正直「ソフト使って復旧できないなら諦めて」とあっさり切り捨てられることも覚悟していたのでこの対応はありがたかった。
そういった社内ルールなのか、1日1通しかメールを送ってこないので
直ぐに返信をしたのに次の連絡・指示までジリジリした気持ちで待つこともあったが それでもサポートとしてしっかり1つずつ確認する姿勢は大切だと思うし
ここまでくると、もうメーカーにしか頼れないだけに心強かった。
ただ、メーカーの確認、そして指示通りにソフトを使ったところで
結局出てくるのは「何も見つからない」という画面のみ。
ああ、これは「もう無理ですね、諦めて」と言われるかなと覚悟をし始めたが
何とここから日本支社のサポートに引き継がれ、驚きの返信が。
・新品交換と工場検査
同等品の新品を送るから、住所と連絡先を教えてくれ、とのこと。
そしてその送付時に、返送用の準備もするので、問題のカードを送って欲しい、会社で復旧を試みてみる、とのこと。
え、そこまでしてくれるの?と、正直驚いた。
確かに、カードのエラーは本当にケーブルが原因だったかは分からず、そういう意味では データ復旧云々を抜きにして、今後もこのカードを使うか、ということにやや不安はあった。
新品交換してもらえるならそれに越したことはないし、なにより、もうあきらめるしかないかと覚悟したデータ復旧を、会社側で試みるとはなんと頼もしいことだろう。
了承し、連絡先を送り、そして数日後(これも私は家から遠く離れた地にはいたが)
私の元にレターパックプラスが届く。
案内状もなにもなく(写真にはないが保護材にはくるまれていた)

替えのカード、そして返送用のレターパックプラスだけが入った簡素なものだが
それ故、例外的に迅速に対応してもらえたような感じもしてありがたかった。
届いたカードはもちろんテストしても問題なく、その次の撮影から安心して使えた。
そして問題のカードはメーカー側に送り、結果を待つことになる。
送ってから2日後、メールが届く。
・カメラフォーマットのリスク
結論からいえば、会社からの連絡の内容は
「問題のカードはカメラZ9でフォーマットされているので全てのデータが消えている」とのことで復旧は不可能という結果だった。
正直ここに至るまでに何度も覚悟していた事だったのでデータ消失自体はやむなし。
真摯に対応してくださったメーカーには感謝している。
同時に、通常のフォーマットであれば、あくまで今データのある領域を「上書き可」にするだけのものであり、復旧はしやすいはずなので、なぜ、とも思った。
ただし、Z9でカードをフォーマットすると、どうも高速に書き込めるように準備するために
完全にデータを削除するという形になるらしい。 (それ以上にZ9用になんらかの処置が行われているのかは分からないが)
正直に言えば、今回私はわざわざZ9でフォーマットをした、という自覚がない。
だが、逆に言えば、あの混乱と疲労の中で「絶対にしていない」とも言えない。
ということでメーカーが調査した結果の通り、どこかのタイミングでZ9でフォーマットをしていて、その結果全領域が消去された、ということなのだろう。
なお、仮にどこかで無意識的にZ9でフォーマットしたとしても
クイックフォーマットだったであろう、ということは間違いないが
それでも全領域が削除され、公式ソフトやメーカー側でも復旧できなくなることは
忘れぬように留め置いておきたい。
今回はドタバタの中で、結局は最初の転送ケーブルの問題だったのかも含めて
色々と不明な点は多い。
ただ、結果としては、メーカー側が真摯に対応してくれたことは間違いないし
不安の残るカードは新品交換してもらえたことで、安心もできた。
仮に、ソフト購入してもファイルが何も見つからなかったんですが、と
連絡をした時に「どうしようもないので諦めて」と言われていたら そんなメーカーのカードをこれからも使い続けるのは不安が残ったかもしれない。
しかし、実際には2週間にも及ぶメールのやりとりを行い
新品のカードを先に送ってくれて、エラーカードは解析もしてもらえた。
細かい話だが、返送も含めてレターパック代はこちらは1円も支払っておらず
サポートのアフターサービスに感謝するばかりだ。
今後もProGradeDigitalを使っていきたいと素直に思えた。
あとは、私自身、改めて万が一のエラーの際に
・直ぐに使用をやめ公式のソフトにかけるまで触らない
・間違えてもカメラでフォーマットはしない
・いざとなればメーカーサポートに相談してみる
というのを忘れず、今後も気をつけて、うっかりミスなど起こさないように気をつけていきたい。
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