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光は直進する ドール写真編

Doll Chateau - Austin


ドール写真をtwitterに上げた折に、過去に何度か受けた質問がある。

・背景は黒布か背景紙を使っているんですか?

・加工などしてるんですか?


答えはどちらもNOである。



今回はその辺りの話をしていこう。


まず、我が家のドール事情としては

Doll Chateauさんのドールを始めとして数体、そして数体のぬいぐるみたちがいる。


普段は部屋にあるガラス戸付きの書棚の中に暮らしている。

ざっくり雰囲気だけでも。

左からDoll Chateau - Christina Elizabeth Austin


元々は大量の本を収めておくために、祖父母の家からもらい受けた書棚だが

この「ガラス戸付き」というのが非常に良い。


部屋にはベッドもあるので、どうしても埃が舞う。

本棚に埃はつきもので、事実、戸の付いていない本棚もあるのだが

そちらは油断していると、かなり埃が積もっているものだ。

かといって、タンスのような木製戸ではどこにどの本があるのか分かりづらく

結局、中は見えるが埃は入らないガラス戸というのは、非常に使いやすい。


ましてやドールたちを、真っ暗な中に押し込んでおくのは忍びないので

外が見える、そしてこちらからもいつも見ることができるガラス戸書棚は重宝している。

(なお、紫外線対策に、部屋の窓自体が紫外線カット効果を謡うものになっているのに加え

念のためこの書棚のガラスにも紫外線対策フィルムを貼っている)


さて、ざっくりではあるが上記写真で雰囲気を見てもらえれば分かるかと思うが

ダークブラウンの普通の棚である。

落ち着いた色合いでそこも気に入っている。

ベタな言い回しをすれば、木の質感は温もりを感じてよい。

表面にはそれほど光沢はないが、ニスが塗られているようだ。




さて、話を戻そう。


1枚目の写真も、ここで撮ったものだ。黒い布や紙を敷いたわけではない。

ガラス戸は開けて撮る。でないと反射して部屋の中が写り込んだり

ガラス越しで解像力が落ちるからだ(それを狙うならそういう撮り方もある)


確かに暗めの色をした棚だが、普通に撮れば、背景まで写り込んでしまいそうだ。


そこで大切なのは「光と機材の特性」を知る事である。



光は直進する。まずはこれは基礎中の基礎として覚えておく。

そして光は反射する。(入射角と反射角は等しい)


そう小学・中学の理科でやりそうな話だが、カメラは光を捉える機械なので

このことは常に付いて回る。光には波の特性がある、というのは今回は省略。


光は直進し、反射して返ってくる。

ということは、今回のような背景黒つぶれ写真を撮るには

・ドールには光が当たるが背景には当たらない(返ってこない)ようにする

これだけの話である。



これはスピードライト(Nikon SB-5000)を使っているが

自然光でも同じようなことはできる。


光っている場所(光源)からの角度と、カメラの位置を考えればどの辺りの光が入り

どの辺りの光が入らないかは分かる。

(分からなくても何度か試せばいいだけの話だ)




例えばCDだとか何か反射しやすいものを室内で撮ってSNSにアップする、なんて時に

部屋の照明が反射して表面が光ってしまってよく分からない、みたいなことがあるだろう。

その時、ほんの少しCDそのものか、カメラの角度を変えてやれば反射は消える。


光は直進し、反射する時の入射角と反射角は等しいからだ。

部屋の照明は固定されている(タイプだと仮定して)

その光がCDに当たる角度と、CDとカメラの角度が等しければ

反射した光がもろにカメラに当たるのだから、表面は光ってしまう。


極端な話、照明にCDを向けてそれをカメラで撮る場合、180°逆から撮っているのだから

CDの表面での反射は起きない(今度は逆光ですごく撮りづらいかもしれないが)



私の書棚の場合、近い窓は北側にあり、やや西に延びている。

よって朝日は入らないが夕日は入ってくる。

夕日の角度によっては、直射日光のように棚を直撃するし

(その時はさすがに紫外線が心配でブラインドを落とすが)

角度がずれていれば、棚を直撃することは無い。


棚(にいるドール)を直撃している場合、

強い光源である「太陽」の光なので、ドールたちに当たるだけでなく

その後ろの棚背景にもあたるし、強い光なのでそれは十分跳ね返ってきて写真にも入る。


夕日が差し込んできた風の写真を撮りたければ、それもまた良しだが

そうでなく今回のような写真が撮りたければ避けた方が良いだろう。


つまり、太陽(光源)の角度を考えれば、夕方に撮るのは避けよう、となる。




光が無く、全体的に薄暗い部屋であっても

今回のように、ドールたち自体が白っぽいボディをしているなら

薄暗い棚と白い肌の対比で、十分こういった写真は撮れる。


大切なのは、光が当たりすぎていないか(見せたくない棚背景まで光らせていないか)



カメラ(センサー)にはダイナミックレンジ(DR)という考え方があるが

これは、そのカメラが写せる「一番暗い限界」と「一番明るい限界」の幅のことだ。


この限界値を越えた部分が、写真データの中では

明るい部分は真っ白けになるし、暗い部分は真っ黒けになる。

DRの広いカメラなら、逆光気味で撮っても、光ってる部分が白くなりすぎたり

陰の部分が真っ黒になってしまわずに色が残りやすい。

逆に狭いカメラならすぐに白飛び・黒つぶれが発生する。




なので、今回のような写真の場合は

露出を落とし、黒つぶれが発生するようにしていけば、簡単にできる。


露出はシャッタースピード、絞り、ISOで変えれるので

例えばボケや解像度を大事にするのなら、絞りを基準にすればよい。


大きくぼかすなら開放にするが、それだと明るくなりすぎるので

シャッタースピードを上げるとかISOを基準感度以下にする。


というのはマニュアル設定の話なので

絞り優先オートなどの場合は、測光を変えるか

露出補正でマイナス0.7、1.0、1.3と変えて試すと良いだろう。



上記写真もそうだが自然光で無くライトを使う場合も基本は変わらない。

こちらはprofotoのA1Xというライトを使っている。

SB-5000よりも「ライトを使ってる感」が強く出ている気がする。



ここでも大切なのは同じ、背景まで光が回らないようにする、これだけだ。


とはいえ、光は直進するのでライトをカメラの上に乗せた

オンカメラ方式でライトを使えば、光はまっすぐに当たってまっすぐ跳ね返ってくる。


オフカメラ(カメラから外して光らせる)ができない環境の方もおられるだろうから

外して良い位置から光らせる、というのは無しで考えよう。



要するに、まっすぐ打つ(光らせる)からまっすぐ返ってくるのだ。


この手のクリップオンストロボ(ライト)は首の角度を変えられるものが多い。

カメラに内蔵していて、光らせる時にぴょこんと出てくる

ポップアップストロボにはその機能は基本的にはない。


ライトの首が振れるということは、カメラと同じ向きにまっすぐに光らせずに

横に向けて光らせたり上に向けて光らせたりできる、ということだ。


さて、上の写真を改めて見て頂くと

光は写真のやや斜め左上から来ている事が分かるかと思う。



これはカメラを縦位置にして、その上に乗っているライトの首の角度を変え

直接ドールに向けるのではなく、斜め上に向けている。


そしてその光は、棚の壁に当たり反射してドールに当たる。

こうしてライトの光を何かに当てて跳ね返す方法を「バウンス」という。


天井に跳ね返すことが多いが、棚の中ではやりづらいし

棚の天板に当たった光が反射して真上から降り注ぐと、ドールの顔に影ができやすい。

なので今回のように壁を利用して横や斜めから降らせるのだ。

これは壁バウンスと呼ばれる。


とはいえ、狭い棚の中での撮影であるので

・反射した光が強すぎる

・そもそも反射ではなくライトの光が直接入ってしまう

なども十分起こり得る。



そこで幾つか工夫してみる。


・光が強すぎないようにする

・ライトからの光が直接届かないようにする


これをクリアすればいいということになる。


まず簡単なのがディフューザーを使う。

ディフューザーはざっくりいえば白い布や紙で、ライトの光をそれに当てる

つまり、それを通すことでライトの光が直接当たるよりも柔らかくなるための道具。


サイズも素材も色々な製品が出ているし、別に買わなくても

例えば自分でA4紙をライトの前に垂らすみたいなことでも良い。

ディフューザーとはdiffuse、拡散する、散らすという意味から来ているので

光を拡散して全体に散らせばいいだけなので。


ただし拡散した光が思わぬ部分まで光らせてしまう場合もあるので

これも何度か試してみてどう変わるかを掴んだ方がいいだろう。



次に、当記事2枚目の棚の雰囲気が分かる引きの写真を見てもらいたい。


ドールたちのいるスペースが撮影スペースだが

カメラ(レンズは)この位置にあっても

ライトはあえて隣(ラテンアメリカ関連書籍の上の段)付近で光らせるという方法もある。


(カメラを縦位置で構えるので、カメラの上に付いているライトは自然と左に倒れる

この状態でライトの首を立てれば隣の列にはみ出してしまう事を利用する)


あくまで元は棚なので、隣の空間とは壁があって隔てられている。

壁の向こうでライトが光っても、当然光はほとんど入ってこない。

これは撮影スペース(ブース)を使った撮影でも同じで

あえてスペースの横、外から光らせてみて、どれくらいの光が入ってくるのか

何度かあれこれ試してみると、思わぬ面白い光が入ってくるケースもあるだろう。



さて、何より大事なのが光量調整である。

拡散させようが、光が入りづらい位置や角度で光らせようが

発光が強すぎれば、やはり直線的に入ったきた光はドールの後ろ、背景までも

明るくしてしまうだろう。


そこで光量を調整して、ドールまでは届くけど背景までは届かないような

設定になるように何度かトライしてみるのが良いだろう。

今はライト自体の光量調整ができるものが多いし、

さらにISOや絞りなどカメラやレンズの設定も合わせて光の量をベストにしていく。


なお、シャッタースピードは、ライト使用時に速くし過ぎるとシャッター幕が写り込んでしまうので設定上固定されてしまう場合もあるので注意。

ハイスピードシンクロに対応したライトであればあまり気にしなくて良いが。


なお、ライトの光の量はガイドナンバー(GN)という表記で表されることが一般的だが

これは絞り×距離を表している。

細かい数値は省略するが、だいたいどれくらい光が届きますよ、みたいな指標。


棚の中は狭いので5m届こうが10m届こうが関係はないのだが

逆にそこから考えてそれを1/32にすれば大体こんなもんか…くらいには

ざっくり考えてみても良いかもしれない。



とまあ色々書いてきたが

今回の私のケースの場合はこれらの合わせ技である。


まず、レンズを決めて絞りも決める。

レンズによっても絞りによっても描写は異なるので、まずはそっちを決めてしまう。

(自然光のみで光が足りない場合は開放f値の小さなレンズを開放で撮る、というのが基本になるかもしれないが)


その後ライトを選んだら、どこに反射させてどれくらい光らせるかを考える。

今回は最初、壁と天板のちょうど棚の内角辺りを狙ったが

少し強かったのでもう少しライトをそらせて棚からはみ出すようにした。


それで反射のほのかな光は良い感じになったが、拡散気味に光らせたので

ライトから直接届く光もドールに当たってしまったので

今度はライトの前に影取りジャンボというディフューザーを差し込んでみた。


ライトを至近距離で使ったとは思えないほど弱い光になったが

その分、背景は黒くつぶれ、暗闇へのドールの溶け込みも自然になった。


かくしてああいった写真は完成する。



長々と書いたのでややこしくなってしまったかもしれないが

「光は直進し、反射する」

このことさえ分かっていれば、撮る前にも大体の筋道はたてられるし

これはカメラが光学機器である以上、どんな撮影にも通じることなので

常に頭に入れておくと良いだろう。

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