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レンズにバター



その論調としてはあり得ない、信じられない、という話だったが 昔はよく聞いた話ではあるので、別段意外な話だとは思わなかった。

マーガリン、マジック、指紋べたべたetc


カメラはレンズを通ってきた光を記録するので、当然レンズが汚れれば 入ってくる光もスポイルされたものになる。 ぼやっとしているかどうかはさておき、普段と違う描写になることは間違いない。

撮った後のデータに現像ソフトで加工を施せる今と違って 昔はレンズそのものに加工を施して描写を変えていたわけだ。




へーなるほど、やってみよう、というのはちょっと待って頂きたい。


レンズそのもの、という書き方をしたが レンズの前玉に直接バターを塗ると結構なダメージになってしまう危険性がある。


よくある、はーっと息を吹きかけて吹くのすらコーティングを痛めるといわれるくらいに 光学機器というのは繊細なものなのだ。


もちろん写真家さんの中には本当にそういうのをやる人もいるし 敢えてコーティングの傷んだレンズやオールドレンズ、もっといえば ひび割れたレンズ等で撮って、そのレンズならではの描写で作品を撮る方もおられる。


ところが一般的にはレンズというのは高価で大切なものであって なかなかそういう思い切ったことはできない。 やってから後悔しても時間は戻せないのだ。


ところが、そういう事を簡単に試すことができる。 保護フィルターである。



この、レンズの先端についてる薄い枠 「MC PROTECTOR 67mm」と書かれてるものがそれである。


要するにレンズの前に付けて、万が一の汚れや傷から守ってくれるものだが 撮影しない時に付けているレンズキャップ(多くはただの真っ黒なプラスチック)とは違って 光を通すガラスやプラスチックの透明な円盤である。


レンズの前に保護用のレンズを付けている、というのが簡単で分かりやすい説明だろうか。

で、これが各社色々と出していて うちのは撥水加工してるよ、とか、静電気発生しづらいから埃付きづらいよ、とか うちのは簡単に割れたりしないよなどなど、売り文句や特徴が異なる。


当然それだけ違いがあるということは、価格も違う。


一枚余計なものを通して光が入ってくるのだから、当然画質にも影響があるわけだが 高価格なものほどその影響の少なさを謡っている。 が、ハッキリ言ってその違いは微細なものなので、本気でこだわる人以外は よほど変なものでなければ正直何でもいいのではなかろうか、という気すらする。


私は基本的にはNikonのARCRESTというフィルターを使っているが 正直、安くはないし、よほどシビアな条件でなければそんなに性能差はないので 一般的にはもっと安いもので良いと思う。 そもそも元のレンズ自体の性能がそこまで高くなければあまり意味のない話でもある。



閑話休題、で、この保護フィルター 長くカメラを触っていると、昔買ったかなり安いものがどこかに放置されていたりする。

今回はそれを使って、冒頭の「レンズにバター塗って」云々を検証してみようと思う。



とりあえず保護フィルター付けてみただけ。 レンズはZeiss milvus 50 F2M、カメラはZ9でFTZ2を介して使っている。

まあ普通に写るよね。




安い保護フィルターだと変な角度から光が入ると いわゆるゴーストなどが発生してしまうのだが生憎の曇天、別段問題はない。


言うてもマクロだし解像力も十分 (等倍で観ないと意味はないけどわざわざ等倍切り出しとかは面倒臭かった)


さて、ではとりあえずやってみようか。 なおこのフィルター何年も使ってなくて今後も使う見込みがない、ハッキリ言えば 後はいつ捨てるか、だけの状況なので今回は実験のために使わせて頂いた。



ホワイトボードマーカーでぬりぬりしてみたよ。

良いコーティングだったら弾かれるかも、と思ったけど意外と普通に描けた。


指紋がちょっとついても神経質になるレンズにマーカーがこんなに! これはさぞや写りに悪影響が出るだろう…



あ、ちなみに今回実験や検証と言いながら 厳密な事をする気は全く無いので 手持ちで設定もちょこちょこ変えながら適当に撮ってます。


おお、空に影が!といいつつ…なんか思ったほどではないな…

部分的に黒い雲が、と言われればそれまで…




まあ、部分的に黒いと言えば黒いけど、地面や石なんてこんな色だと言われればそれまで…



これ本当に塗ったあと?

と思うくらいに分かりづらい。


結果・レンズ(の前に付けた保護フィルター)をマジックでぬりぬりしても 被写体・背景によってはよく分からん。

次だ、次!!



このご時世あちこちで見かけるあれ

そう、消毒用アルコールジェルをぬりぬり。


うっかりレンズ本体にも少し付いてしまったので皆さんは真似しないように。



アルコール自体は無色透明だがジェルなのでネバネバとした付着感。 これはオイルとかそういうのと同じ感じなのでは!


まとめていきまーす




おお、ぼやっとした!これぞノスタルジック感!


っていうか、単純にピント合わせづらいな…(このレンズはMFレンズ)


黒いマジックぬりぬりより、透明だけどジェル塗り込んでる方が 光が歪んで入る分、描写の差は分かりやすいかも。



で、せっかくマクロなのでなんかマクロっぽく寄ってみよう、と思ったのだが さすがアルコール、あっという間に揮発してしまって、なんか普通に。

アルコールは効果は大きいが短めだった。 だからといってレンズ自体に付けるとコーディング傷めそうなのでしないように。



はい、次。

これも昔からある定番の1つ、ラップ巻いちゃいました。




ラップの良いところは調整がしやすいところですね。 ピンと張るのか、どこかにしわを作るのかで目に見えて描写が変わるので。


分かりやすく右下辺りがちょっとしわな感じにしてみた。



まあ全体的に解像落ち、しわのところは「もやっ」となって光量も落ちてるかなと。


汚したりしたくなければ、ラップ巻くのは昔から伝わる先人の知恵ですね。 もちろんラップじゃなくてセロハンだったり薄い紙や布でも光通すならなんでも。 外すだけなので原状復帰も楽。 ただしフォーカスでレンズ長変わるような機構だと 動きによっては中に入り込んでしまうリスクもあるのでお気をつけて。



はい、次、カメラユーザーの悪夢の1つ、前玉に傷が!!! を、保護フィルターでテストしてみた。(畑の土・砂利に落っことした)


なかなかショッキングな画だが、その昔身近にほぼこれに近い状況になった人がいる。 しかも保護フィルターなしで。稲刈り直後の田んぼにカメラを落っことしたのだ。


今回は捨てる前の保護フィルターの最後のお努めなのでお気になさらず。




さて、これだけ傷ついちゃうとさぞや写りも悲惨な事に……



ん?全然分からんね?? ピン甘なのは私の目と、さっきまでのジェルとかの弊害ということで。 傷が入ってる部分に黒い筋が、とかが無いので全然分からん。

そう、前玉にちょっと傷がついたくらいで、写りなんてそうそう変わらないのである。 たまに前玉に埃がちょっとついてるのを 必死にシュポシュポとブローで飛ばしている人がいるが それ自体はもちろんその人の自由ではあるが、ハッキリ言って意味はほぼ無い。


後玉だとかなり影響が出る場合もあるのでその違いは知っておこう。 なお、センサーに埃が付いているとしっかり全ての写真で陰になる。


というわけで傷入ったところであんまり変わらず。 期待外れの結果だったのでちょっと変化球を。


レンズの前に眼鏡を当ててみた。

帯状にすりガラスやモザイクのような像の乱れがあるのが分かるだろうか。 その帯から外れた部分は普通に結像しているので 入っている部分とそうでない部分との差が明確である。


レンズに入ってくる光、を変えればいいので 上記のジェル然り、透明であっても光軸が変わるようなものにすれば 写りには明確に違いが出るので分かりやすく面白い。



最後、バターにしようと思ったけど食べ物はちょっと…ということでスティックのり。

今まであまり思ったほどは劇的な変化がなかったので ちょっと厚めにぬりぬり。



おお!これは!かなりの変化。



これこれ、このぼやっと感!良い感じじゃないですかね。


厚く塗りすぎるとただの陰になっちゃうので やや薄めに全体的に塗り広げるのがコツ(?)ですかね。




はい、というわけで、今回はSNSで目にしたツイートから レンズにバター塗るなんてとんでもない!というところから始まり そもそも前玉(の前の保護フィルター)に どんなことをしたらどれくらい影響あるのか、というのを実験してみました。


うっかり触って指紋ついちゃった、とか、埃がついてる、なんてのは 写りにほとんど影響がないのが分かって頂けたかなと思います。

ただし指紋は放置してると、人間の油脂等でコーティングを傷める場合があるので こまめにお手入れするのは大事です。




あと、今回使わせてもらったMC保護フィルター 安いものなんですが、防汚性も高く、マーカーやジェル塗った後も 実験後にはさっと拭き取れてメンテも楽でした。



もちろん、シビアな条件で厳密な撮影をするのであれば フィルター無しのレンズそのままの描写の方が良いですし 保護フィルター付けるなら、その性能によって使い分けた方が良いかなとは思いますが 低価格でもうっかりの汚れや傷から守ってくれて

いざとなれば簡単に交換できるという点を考えると非常によいものではないでしょうか。

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