top of page

リトルNikon EM

執筆者の写真: GiroGiro

フイルムカメラに触れてみる、撮ってみる少人数(マンツーマン可)体験会の企画も進めているので、そちらもお楽しみ。



さて、フルサイズミラーレスカメラをキヤノンやニコンが出し始めた頃

数年先行していたソニーは、フルサイズなのにミラーレスであることを活用し 小型で軽量、そして高性能なカメラを既にたくさんリリースしていた。


私としては、機材のサイズや重さはトータルバランスで決まるので 大型レンズを使うのであれば、結局のところはカメラ自体にもある程度の大きさが無いと バランスが悪くなってしまうと感じている。


そこで、少なくとも私の使い方においては「ミラーレスだから小型」である必要はなく むしろいずれ出るであろう大型レンズを付けてもバランスが良く そして長時間の使用でも手になじむエルゴノミクスを追求して欲しかった。


またマウント径自体も、変にボディサイズによって制限されるよりは 光学性能重視で大型のものにして欲しいという思いがあったので そういう意味ではニコンがZシリーズを出してくれたことは僥倖であった。

(Z機自体の現時点での完成度についてはここでは明言しないが)



そんなわけでニコンは小型軽量化よりも他の要素を追求する企業である 分かりやすく言えば多少でかくても重くても、質実剛健、信頼度が高く 丈夫で、光学性能に妥協しない機種を出す、というイメージを持つ人は少なくないのでは。



しかし、ご存じだろうか、今から40年も前に、ニコンが出していた小型機のことを。


その名も『ニコン EM』


ニコンの一眼レフはニコンFから始まり 報道記者を中心に、プロの道具としての信頼度の高さ、そしてニッコールレンズの 性能の高さを売りに、世界中に広まっていったわけだが フラッグシップ機としては細かい改良を除けば、その後はF2→F3と進んでいく。


F3は私も所有していて以前の記事でも紹介したが いかにもニコンらしい質実剛健な造りながら、デザインがかの有名なジウジアーロが手掛け なんだかお洒落な雰囲気すら持っている、ニコンの変化を感じさせる一品だった。


ちなみにジウジアーロといえば 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でタイムマシンになった事でもおなじみの車 デロリアンのデザイナーでもある。

(日本だといすゞ117クーペ等も)


工業製品のデザインというのは、パワートレーン(内部機構)の配置バランス等の面と 表面上の見かけの設計(いわゆるスタイリング)とがあるのだが 見かけがどれだけ斬新でお洒落でも、使いにくくては意味がないし どれだけ使いやすくて考えて作られていても、見かけがカッコ悪くては売れない、 というわけで世界的なデザイナーに依頼して作られたF3は非常に高評価で今も人気は高い。




が、当たり前の話だが、元々が報道記者の取材や冒険家が使うような (それこそ戦場カメラマンや機動隊と衝突するような大規模デモの撮影、北極探検など) ニコンのフラッグシップの流れなのだから、でかくて重くて頑丈である。


おりしも時代は変わり始めており リコーやコニカ、ミノルタが安くてお手軽なカメラを出したこともあり カメラというのは一般人が気軽に使うものでもある、という風に変わりつつあった。


そんな人たちがF3のような本格的な大型機を買うかというと、買うわけがない。


そこでこのF3の小型、軽量、廉価でありながら でもデザイン性も高く、ニコンらしさもありF3の人気にもあやかった、というような 非常に良いポジションで出されたのがこのニコン EMである。


通称「リトルニコン」という呼び名もさもありなん。



さて、このEM、小型軽量の一眼レフ、では済まないくらいに変わった機種である。


まず上部は金属ではなくエンジニアリング・プラスチック(通称エンプラ)製となっている。

エンプラ製とはいえ、塗装がいいのか触ってみてもプラスチック感、 もっといえば安物感はまったくなく、正直言われなければ気づかない人もいるのでは。



そして上から観れば一目瞭然なのだが「シャッタースピードダイヤル」が無い。


おさらいだがカメラというのはレンズの絞り、カメラのシャッタースピード

そしてフイルムやセンサーのISO感度、この3つを調節することで明るさを決める。


フイルムカメラの場合は、撮影途中でISOを変更する事ができないので 絞りとシャッタースピードだけで画作りをしていくわけなのだが なんとこのEMは、シャッタースピードを自分で決められないのだ。


今のデジタル一眼を使っていても、絞り優先オートというモードにして 絞りだけ自分で決めて、他はカメラに任せる、という撮り方をする人も多いが

この機種は「絞り優先オートしか」使えない、という非常に珍しい機種なのだ。




一応補足しておくと、シャッタースピード1/90秒と

バルブ(シャッターボタンを押している間シャッターが開き続ける)だけは 設定できる(しかもこの2つはメカニカルなので電池が無くても撮れる)


後は恐らく逆光の時などに使えるであろう 露出補正+2 ボタン(2段シャッタースピードを落として露出を上げる)だけが付いている。


非常に極端であるが、ここまで割り切ったことで カメラ初心者の人でも、露出設定をミスしてしまい フイルムを現像したら真っ白になって何も写ってなかった、みたいなことが防げる。


F3というニコンらしい本格的なフラッグシップの息吹を受けながらも 非常に小さくお洒落、しかも簡単、というニコンらしからぬ機種がこのEMなのだ。





さて、ニコンEMと同時期に、実はニコンはあるものをリリースしている。 それがLENS SERIES Eというレンズ群である。


これはEMのコンパクトさをスポイルしないように設計された 小型軽量のレンズ群で、当然ながらEMに組み合わせると非常にマッチする。




何本か出ているのだが、個人的にはEMにつけてお散歩するなら このEシリーズ 35mm f/2.5をお勧めしたい。


35mm単焦点ならf/1.8じゃないの?と思われる方もいるだろうが なんといってもカメラはリトルニコン、EMなのだ。

でかくても高性能なレンズが使いたければ他の機種にすればよい。


あくまでEMとのマッチングという意味ではこのf2.5が非常にまとまっていてよい。



とはいえ、ニコンである。

ニコンのレンズはニッコールブランドなのだが、そのニッコールという冠がつかなかった

Eシリーズ、とはいえ、ニコンのレンズなのだ。


当然、安かろう悪かろう、あるいは小さかろう悪かろう、ではない。



Z6Ⅱにつけてテストしてみた。

開放だとさすがにピントが掴みづらかったので絞ってf4で使っている。


解像も色乗りも非常に悪くない。ちなみにけっこう寄れる。

カメラにつけても主張しすぎないサイズで、しかも軽い。


小型軽量さよりも光学性を重視してくれ、なんて日ごろから偉そうに言っている私でも EMを持つ時だけは、この小さくて可愛らしい機材の心地よさに浸るのであった。


なお、露出補正などできないのであれば コンパクトカメラとほとんど変わらないじゃないか、と思う人もいるかもしれないので 一応補足しておくと、露出補正ができないわけではない。


カメラ側のISO設定ダイヤルをあえて装填しているフイルムと違う数値にすることで カメラの判断よりも設定を明るくしたり暗くしたりして写す事ができる。





告知

さて、そんなわけで今回はリトルニコン、EMを紹介したが

冒頭にも書いたように、もう少し新型コロナが落ち着けば フイルム一眼レフカメラ初心者向けの体験会、撮影お試し会などを開催しようと企画中。


カメラ・レンズ・フイルム、すべてこちらで用意するので 手ぶらで来てもらって、フイルムカメラで遊んでもらえればと。

もちろん使い方やコツは私が教えます。


機材の台数に限りがあるのと、質問など気軽にしてもらえるように 人数は少なめにして(最小はマンツーマンから、最大でも3人くらいまで)

どこかよさげなスポットを散策しながらフイルムカメラを使って楽しんで頂こうという そんな企画である。


フイルムカメラに興味あるけどよく分からない 欲しいけど使いこなせるか自信がない

とにかく一度使ってみたい


そんな方に、触れてもらえればと思う。

場所や内容などは柔軟に対応できるので、興味あれば連絡して頂ければ。

0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


© Giro

© Copyright
bottom of page