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ボタンウサギさんとの撮影

既にtwitterなどで紹介して頂き、また私の方でも一応報告したように

現在、縫々王国ナカノカナさんのHPのトップ写真に、使用して頂いている 。



私と 縫々王国さんとの繋がりは、数年前の大阪で行われた

あるハンドメイド作品のイベントで、知人のブースを覗きに行った私が

たまたま縫々王国さんのブースを目撃したところから始まる。


要するに、私が一目見てあまりの可愛らしさにデレデレになったのだ。



とはいえ私は、今でもそうだが

この手のイベントで売り子さんに話しかけるのが大の苦手。

というか、当代随一の人見知りなのだ。


その日は、チラチラ横目で見ながら通り過ぎつつ

いわゆるショップカードのようなものをさっと頂戴するので精一杯だったのだ。


その後、少ししてからネットでお迎えできるということを知り

あろうことか、非常に素敵なレイチェルさんをお迎えしたのであった。



それから、大阪であった個展や神戸・元町の個展にお伺いし

twitterなどでの交流もあり、少しお話をさせていただくようになって

ボタンウサギさん、縫々王国さんの魅力にどんどん引き込まれていったのだった。





HPを見て頂ければわかるが、縫々王国さんには

きちんと王国の地図もあるし、そこで暮らすボタンウサギさんたちの

個性豊かなキャラクターもわかり、生活の様子まで垣間見えてくる。



私は子どもの頃に、ナルニア国物語やゲド戦記等の古典ファンタジーに触れ

いわゆる「空想の翼」を広げてその世界を旅するのが好きだった。


本に地図の挿絵があれば、物語では直接触れられなくとも

この森にはきっとこんな動物がすんでいる、この丘ではきっとこんな風が吹いている、と。



縫々王国さんの地図を見ていても、それは同様で

しかもそれは個展が開かれる度、ナカノカナさんとお話しする度に

ここにはこんな子が住んでいたんだ、こんなことが過去に起きていたんだ

と紐解かれ、ボタンウサギさんたちの王国世界は、一層広がりを見せていく。


自分が旅をすることになれば、まずどこから訪れるだろう

なんて考えては、まだ見ぬ王国の全容に思いを馳せてしまうのだった。




そんなナカノカナさんからご連絡を頂いたのは9月も後半に差し掛かった頃だった。


細かいお話はここで書くことではないので割愛するが

ご本人さんから、ぜひあなたに、と声をかけてもらえること以上の光栄は無い。

非常にありがたかった。


その後打ち合わせを経て、およそ1ヶ月後の10月後半に

とりあえずテストがてら最初の撮影を、となり、先日行ってきたのだった。

自分が、縫々王国さんを伝えていくお役に立てればと。




とはいえ、不安もあった。

依頼を受けての撮影で、一番難しいのは何だろう。


機材がマッチしているか、自分の撮影技術が伴っているか

色々と考える要素はあるが、私が思うに最難関は

「依頼者のイメージを形にできるか」最終的にはこれに尽きると思う。


私は写真家ではないので、写真を使って自分を表現するとか

独自の世界を構築するだとかは行わないし、したいとも思わない。


カメラやレンズの知識を活用し、機材の癖や設定を把握し

その時々のベストだと思われる選択肢をチョイスしてシャッターを切る

とまあ、要するに「カメラを操作する人間」なのだ。


そういう人間が依頼を受ける以上、大切なのは

「依頼をしてきてくれた方の理想を形にする」ことで

依頼者と理想の世界の間に立って、橋渡しになる役割こそが自分の仕事だと思っている。




逆に言えば、それには「依頼者の理想・ヴィジョン」が何かを知らねばならない。


実は、以前にも何度かある種の依頼を受けた中で、最も困ったのがそれで

「依頼者のヴィジョンが伝わらない」

「理想的を言葉にしてもらえない」

といったことがあった。


例えば「とにかく綺麗に撮って欲しい」と言われても

綺麗とは何か、この人はどんなものを綺麗だと思うのか、というのは分からない。


私が勝手に自分の美的感覚で撮ったものを相手の方も気に入ってくれれば良いが

「何か思ってたのと違う…」

と言われればそれまでだ。

その際に何度もトライ&エラーを繰り返して

お互いのイメージのすり合わせに時間をかけられればいいが

残念ながら多くの場合は、時間も労力もお互いにそこまで自由が利くわけではない。


「なんか良い感じに撮ってください」という言葉で

相手のイメージを汲み取って撮影できる人がいるとしたら

それはカメラマンというよりメンタリスト的な仕事だろう。




もちろん、写真やカメラについてそこまで詳しくない方からすれば

どう言葉にすればいいか分からないし、どういうのが撮れるのかも分からない、わけなので

「ちゃんと言葉で説明して」というのも酷な話ではある。


それに、超一流のプロなら、黙っていても勝手に

相手のイメージを遥かに凌駕するすごい写真を連発するもんだ、と言われれば

ぐうの音もでないのだが、写真ではそういったケースはほとんど無いと私は思っている。


なぜならカメラは光学機器、光を取りこむ機械であって

現実に存在する物質が反射した光を

レンズを通してどう受け止めるか、それだけの話だからだ。

白紙のキャンバスを渡されて、絵を描いてくれ、と言われるのとは全く違うのだ。



それでも近年、驚くような写真作品を目にする機会が多いのには幾つか理由がある。


1つは、元々は無かった光を使う、いわゆるライティングだ。

ストロボを光らせたり、白い布などで光を反射することで

本来の光とは違う光を創り出して、それを撮影する。


他には、デジタル加工もある。

写真などの画像データも点の集合体であるので、その点を加工したり描き加えたりすれば

元々は存在しなかった画像データが完成する。

極端な話、車が空を飛ぼうが石像が火を吹こうがやりたい放題だし

そこまではいかなくても、例えば花の色を元々とは違う色に変えたり

より鮮やかにしたりといったことは、現像作業で簡単にできてしまう。


ただ、私はそれらのものを観ること自体はそこまで大きな抵抗はないが

自分自身の撮影ではほとんどしない。


影を消すために軽くレフ板で反射させたり、RAWデータを現像する時に

明暗や色味を少し調整することがあるくらいだ。


この辺りは完全に個人の方針や好みなので、どちらが良いという話ではない。





話が逸れた。閑話休題といこう。


兎にも角にも、そういった事情で、依頼を受けてこなすことの難しさは知っているし

それを防ぐためにも、打ち合わせ、もう少しいえばコミュニケーションを取るのが

何よりも撮影にとって大切なことだと思っている。

(どちらか一方が完全に主導権を握っている場合は、それに徹すればいいので話は異なる)



そこで、私は事前打ち合わせで話を聞いた上で

勝手ながら今回の撮影を「テスト」と位置付けた。


ナカノカナさんがイメージした縫々王国の写真、それを私が撮影できるのか。

私は相手の意図を汲み取り、手持ちの機材と、自身の経験と技術で形にできるか。


練習だとか実験だとかいうよりも、それは私に出来ることなのか

私という人間、カメラマンのテストである。





前日までに私が確認したのは数点

「どういった写真をイメージしているか」の確認である。


これは専門的な知識や具体例が欲しいというよりも

例えば被写体に寄った写真なのか、周囲の風景も込みで場所ごと切り取るのか

といった話で、要するに持って行くレンズの選定である。


ざっくり言えば、広角レンズは風景も込みで写し込みやすいし

望遠レンズは背景を圧縮する特性がある。

寄れるマクロなら、被写体に思い切りよれば

背景はボケボケにできるし、簡易的なレフも使いやすい。


また場所(ロケ地)も絞り込まなければならなかったので

その点を色々と確認する。

欧風のイメージということで神戸・北野街並みを考えていたが

前日になってたまたまある写真家さんが

神戸の布引ハーブ園付近でポートレートを撮った、という投稿をしていたのをみて

そういえば神戸にはハーブ園があったなと思い出し、提案の上、そこにした。



建築物はこちらでいじるのは難しいが自然はいじりやすいからだ。

(咲いてる植物を勝手に触るという意味ではなく、写真での切り取り方に幅があるの意)



色々とお話した上で、この日の私の機材は

D850・Z6のカメラ二台に

Zマウントは

標準ズームで汎用性の高い24-70mm f/2.8Sと

ややボケには気を使うが、軽さと取り回しを見込んでZ 85mm f/1.8S

Fマウントは

28mm、105mmの純正f1.4コンビと

寄るケースも考えてZeiss milvusの50mmハーフマクロ。

それにSB-5000とディフューザー、忍者レフなど小物類。

surfaceも含めてフォトキャリオールプロ XLに軽く入ってしまったが

その分重さも相当なものだった。なんともカメラとは、体力勝負である。





さて、そんなこんなで撮影である。


布引ハーブ園は季節柄、ほんのりハロウィンの様相を呈していた。



そこまでバッチリとハロウィン全開ではないのが何とも神戸らしい。

(神戸市民である私の目から見て)



ボタンウサギさんたちはかわいい。

世界観をしっかりまとっていて、一人一人が個性的だ。


それをどう撮るか、というのが私の仕事であり使命だ。

同時に、私が持っているイメージを押し付けることに意味はない。



そんなわけで、極力自分からは口を出さずに進めていった。

(これは他の撮影でも同様だが、自分発信の撮影で無ければ、基本的には私から

ここで撮りましょう、こういうポーズで撮りましょう、とは言わない)



別にそんな自分の立ち位置が良かったという意味ではないが

今回は自然とチームのように撮影ができたと思っている。


例えば軽く園内を歩きながら、撮影に使えそうなスポットを見ていく。

こことか良い感じの雰囲気ですね、となれば

今回5人おられたボタンウサギさんの中から、その場にいそうな子が現れる。


私はそれをみて

この場でこの子であれば、こういう風に撮るのがいいだろうか、と構図を切る。

場合によってはレンズを換えたりライティング機材をちょっとだけ使う。


同時に、要所要所でボタンウサギさんたちのポーズや仕草が少しずつ変わっている。



お互いがお互いの思惑をすり合わせながら

自然と役割分担ができ、最も懸念していた

「依頼者のイメージ」に近づけることがスムーズにできている気がした。



レイチェル (縫々王国 ナカノカナ)

Z6 + Z 85mm f/1.8S


結局、撮影自体は13:30頃から16:00過ぎ頃まで

場所を転々としながらのため移動は含むが、ほぼ休みなく行った。


細かい内容はさておき、こちらとしても

良い撮影ができたと思っているし、ナカノカナさんからも

データを送った後で、非常に嬉しいお言葉を頂いたので

ほっと一安心した。




色んなジャンルの撮影を行っているが

私自身の本道は、最初にも書いたように「カメラを操作すること」


そして、それによって生まれた写真が、人にある種の感動を与えられるのなら

これほど光栄なことは無いし、カメラが好きでよかったと実感する瞬間でもある。



そして今回は、これが大好きなボタンウサギさんたちの魅力を

お伝えできる結果に繋がれば、それもまた非常に嬉しいことなのだ。


冒険家ジーナ (縫々王国 ナカノカナ)

Z6 + milvus 50 F2M


これからも私が、縫々王国を

カメラを持って旅する機会が得られるのであれば

きっとまた、素敵な様子をお届けできるだろうと思う。

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